いつものように、御剣の部屋に入った瞬間衣服を着替え出した狼を見るともなしに見ていた御剣は、ある一点に視線を留めた。
「…その線は一体何なのだ?」
「…?」
シャツを脱ぎかけていた狼の動作が止まる。しかし、どうやら『その線』がどの線なのかは伝わっていないようだ。その様子に、御剣は狼を手招きし、直接その肌に触れた。
「この、線だ」
「あぁ、これか」
御剣の指先がそっと触れているのは、狼の肩口。そこには、彼本来の肌の色と小麦色の肌の色との境界線があった。狼の仕事は世界中で行われるのだから、日焼けは珍しいことではない。ただ、御剣の知る彼の衣服からではありえない箇所に日焼け線があったのが気になったのだ。
「この服な、どの気候にも対応できるようになってんだぜ」
御剣の疑問を聞いた途端に、少年の様な表情になった狼は、得意げにいつも着ている上着を手に取った。御剣も常々、この男は夏どのように過ごしているのかとその衣服を見ていただけに、ジャケットを掴む狼の手元を興味深そうに見つめた。
まず、一番暑そうな首元のファーがはずされ、襟の内側から立て襟が登場した。そして、日焼け線の位置となる肩口も、良く見ればファスナーで繋がっていて、それを開けば袖があっさりと外された。
「すげぇだろ?」
得意げな狼に、御剣も素直にひとつ頷いて返した。
「一応仕事着だから、襟がちゃんと出てくるのが"ミソ"ってやつだな」
「なるほどな。貴方のジャケットは、北風も太陽も脱がせられないというわけか」
「あぁ。どんな天候でも、気候でも、状況でも対応できるように…これも狼の知恵さ」
どうやら、袖やファーをつなぎとめる方法は変われど、基本形は代々のものらしい。
「俺のはついでに防弾防火素材で作らせてるから、基本は肌から離さない。寝る時も上から掛けてるくらいな」
「‥‥例外は?」
「そういうの、こっちでは"ブスイ"とか"ヤボ"っつーんだろ?」
言いながら狼はゆっくりと御剣をソファに押し倒した。
「全く、何のために部屋着に着替えたのだ…」
眉間に皺を寄せつつも、御剣は嫌がるそぶりを見せない。それは、先の質問をした時点でこうなることは予測できていたからだ。
「勿論、いつでも脱げるようにに決まってんだろ?アンタと一緒に居ると、緊急事態に陥ることが多いからな」
「異議あり。緊急事態ならば、脱ぐべきではないであろう?」
「アマいな。さっき言ったろ?基本は…ってよ」
狼の軽口に、軽く指を振って矛盾を示した御剣だが、また返されてしまった。普段の言葉遊びでは絶対的に御剣が優位を保つにも関わらず、どうもこの手の話では狼に軍配があがる。
「ならば…例外として、コレもありだろうか?」
早々に降参した御剣は、床に無造作に捨てられたジャケットを拾い上げて持ち主にかける。
「……この場合、コイツに"防弾"機能はねぇけどな」
「そのあたりは貴方のモラルに任せるとしよう」
艶美に笑った御剣の唇に、重ねた唇で狼は『無理』とだけ囁いた。
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確か、書きたかったのは師父の日焼けラインをなぞるみったんだったのですが、なぜかこんなことに。
でも、師父の初期設定を見る限り、袖が着脱式もありかもしれない!とは思います。
ちなみに最後の防弾機能とはコンd(言わんでいい)
最終的に、みったんご希望の着エロに落としてみました(不時着)
師父のノースリーブにドキドキしてるみったんかわゆす!(逃避)