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日記とたまに更新履歴。
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ちょこの日。


ついに来ましたバレンタイン!
何が楽しみって、素敵サイト様の素敵バレンタイン作品が読めること!!


そして社内で素敵なお嬢様方から沢山チョコを頂けること(笑)。


チョコレート好きなのです。
甘いの苦手なのに、チョコだけは好き。
だからニキビ(と言い張る/笑)が絶えないんだな…。


皆様、はっぴーばれんたいん!愛してますvV



以下、諦めかけてたバレンタイン小話です。
小話全部悪戯シリーズですみません…(汗)。

 

 




 

「・・・・。」

 

 

狼は、たった今御剣から差し出されたマグカップを覗いて閉口した。


ティーカップと比べると、幾分も分厚く容量も多いマグカップの中身を満たしているのは、見るからに甘そうな赤茶の液体。
狼の記憶では、それは一般的に「ホットチョコレート」と呼ばれている代物である。


確か、目の前で『どうかしたか?』と涼しいカオをしている恋人は、自分が甘いもの、しかもチョコレートの類が特に苦手だということを知っているはずだ。
それに、異常なほどに記憶力のいい彼が、恋人である自分の好みを忘れるなんてことは絶対にないといっても過言ではない。


と、多少自惚れも含んで思考を巡らせた狼は、再び自分の手の内にあるマグの中身と、それをさも当然のように手渡してきた相手を交互に見つめ、あまり考えたくない答えを弾き出す。



…またか。


 

目の前で、自分に渡してきたものと同じものに唇をつけている恋人は、時折こうやって狼を苛めてはその反応を楽しむ節がある。
今回のこれもまた、同じような趣旨のものであろう。


さて、と。
ご丁寧にふたつも浮かんでいるマシュマロを睨みながら狼はまた考える。

 


飲んで、渋い顔を見せてやれば満足か。


それとも、飲まない理由を一生懸命繕う姿がお望みか。



‥‥前者だな。恐らく。


どちらにせよ自分は大変な目に合うのだ。だったら、相手の満足そうなカオが見たい。
普通なら、相手の望み通りにいかない方を選ぶのだろうが、狼にはその辺りのプライドはあまりなく、むしろせっかく傍にいられるのだから、出来る限り相手には幸せそうにしていてほしい。



笑うなら笑え。



誰に言うともなく心に呟いて、覚悟を決めた狼は、マグを呷った。



「あぁ、まだ‥「熱ィっ!!」



液体が唇に触れる直前に、制止の声が聞こえたような気がしたが、狼はそれどころではなかった。粘度の高い液体が触れた唇と舌がヒリヒリとして、甘いとか、そんなことすら分からない。

ありったけの理性で中身を零すことなく机に置けたことだけが、二次災害を防げたという点で、不幸中の幸いであった。


「だから言ったのだ。貴方は猫舌なのだから…」


外見に騙されることなかれ。実は猫舌そうな御剣は意外と熱いものが平気で、どちらかと言えば狼の方が猫舌なのだ。
だから、いかに御剣が普通にマグに口を付けていたとしても、狼にとっては何の指標にもならない。しかし、違うことを考えていた狼はそれを失念していたのである。


「――――――~っ!」


何も言えずにしばらく痛みに耐えていると、不意に、頬に手が添えられた。
目線だけで相手を伺えば、予想したより近い位置に長い睫毛が見え、その睫毛が伏せられているのだと認識した頃には、もう口付けられていた。


未だヒリヒリと痛む舌を絡め取られる。


しばらくは、優しく、癒すような動きを見せていた舌に、うっかりと気持ちよくなって瞳を閉じかけた時だった。


「!」


火傷した個所を思い切り抉られ、痛みに眉を顰めて、閉じかけた瞳を半ば睨むような形で開く。
視界には、楽しそうに細められたグレイがあった。
 

謝罪のつもりなのか、あやすように何度か唇を啄ばんでから、綺麗な顔は離れていった。

 

「あまりに、貴方が可愛いものだから」


「…不可抗力だろ」


熱さに涙目になっていたことも、うっかり口づけに気持ち良くなっていたことも事実なのだから、いかに不本意でも相手の評価はもっともなところなのかもしれないのだが、狼は気に入らないと顔をそむける。


「否、すまない。一応今日は、悪戯のつもりはなかったのだが…」
「嘘吐け。じゃあ、コイツはどう説明すんだよ。」


マグを顎でしゃくって、子供のように拗ねて見せれば、御剣は困ったような笑みを浮かべた。


「・・・まぁ、飲んでみたまえ」


一応、とついているところをみると、相手も悪戯好きだという自覚はあるようだが、今回は本当に悪戯ではないつもりであったらしい。まだ疑いの眼を相手に向けながらも、狼は恐る恐るマグに唇をつけた。


思っていたより長い口付けだったのだろう、マグの中身は適温になっていて、すんなりとその味が舌に広がる。


「・・・・美味い。」


「そうだろう?」


一口飲んで思わず口から洩れた感想に、恋人は満足そうに頷いた。


「カカオ濃度の高いチョコレートを取り寄せたのだ。貴方の好みだろう?
 ちなみにマシュマロの方も、砂糖などほとんど入っていないタダの飾りだ」
 

ほろ苦いカカオがほんのり甘いミルクと相まって非常に飲みやすい上に、嚥下した後にほんのりと薫るラムが心憎い。


悔しいが、かなり好みの味だ。


「貴方の葛藤する姿は非常に面白かった」


クスクスと笑う恋人に、してやられた方の狼も、その思いがけない気遣いに到底怒る気になれない。それどころか、自分の嗜好を考え、忙しい最中わざわざ取り寄せまでしてくれた恋人に、ますます愛しさが募るばかりである。


「まったく…よもや私が俗に踊らされるようになるとはな。
 ・・・しかし、今日貴方が傍にいてくれて嬉しいのもまた事実だ。」


「‥‥?」


非常に珍しい、相手からの素直な言葉に内心照れながらも、『俗』という言葉に微かに首を傾ければ、それに気付いた御剣が再び顔を近づけてきた。

 

 

 


 ―  Happy Valentine My... ―

 

 


伝えたのは声だったか、それとも触れかけた唇の動きであったか。

 


睦みあう恋人達の傍らでは、マグに残されたチョコレートが、まだ微かな湯気を立ちのぼらせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

FIN...


 


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