「お前、何かオレに隠してることないか?」
ここは職場に近いところに買った、マンションの一室。
この家に帰る頻度を考えれば際どいような気もするが、一応現在の狼の自宅だ。
冒頭の一言は、自宅で一緒に呑んでいた仕事仲間が発したものだ。
彼は、狼が自宅でくつろぐ時間を共に出来るほどの親友であり、警察官になったときからずっと同期でライバルでもある。
「…なんで、そう思う?」
「なんでか、は置いておいて…"なんか変な遊びを覚えた"か、‥‥或いは"女が出来た"か。
どっちかを隠してると見た。さぁ、吐けよ」
目前の友人はにやにやと笑いながら酒を煽る。
彼の言葉から解るように、狼はこの友人にまだ恋人が出来たことは言っていない。しかし、どうやら的確に見抜かれたらしい。
一体何故…
狼が眉間に皺を寄せても、この手のネタが大好きな彼が追求の手を緩めることはない。
「さっさと白状しないと、前者の理由ってことにするぜ?」
どう楽観的に見ても、後者の理由だと確信している様子の友人に、狼は遂に降参した。
「後者だ」
「やっぱりな」
狼の降参のポーズを見て機嫌を良くした友人は、得意げに笑った。しかし、狼としては何故バレたのかが気になって仕方がない。デリカシーという言葉をあまり知らない部類に入るこの男が、部屋で呑むまで言わなかったということは、部屋に入ってから"何か"を見つけたに違いない。
「何でわかった」
暫く考えても理由が見つからなかった狼は、呻くようにして問うた。そんな悔しげな様子すら愉しいのか、彼はさらに機嫌を良くしながら、事も無げに教えてくれた。
「ベッド」
その一言に、自分が背を預けていたベッドを振り返れば、そこには無造作にコンドームの箱が転がっていた。
なんてことはない。今朝まで珍しく御剣の方がこちらに来ていたために部屋は片付いていたし、何より旧知の友だし男だし、と無造作に友人を自宅に呼んだ狼のミスである。
「俺の専門がプロファイリングだって、知ってるだろ?」
「…オフまで不必要に仕事持ち込んでんじゃねェ。
そういうのを日本語で"コウシコンドウ"って言うんだ」
狼としてはごく無意識の切り返しだったのだが、それを聞いた彼は、大きく目を見開いた。
「へぇ、相手は日本人か。ブロンドが好きだったんじゃないのか?
しかも、随分と長い間隠してやがったな?」
此処まで言われてしまっては、今更しまったと口を閉じてももう遅い。
今夜の酒の肴が決定してしまった今、狼に出来ることと言えば、相手が男で検事だということだけは口を滑らせないように、酒量を控えることのみであった。
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…はい。師父好きの皆様大変申し訳御座いません(土下座)。
変な遊びとは、ベッドにあったそのようなアレでの独り遊びです(笑)。
二人の会話は英語ですが、さらっと「コウシコンドウ」とか言ってたら楽しいな、と。
それだけのお話でした。
さー、仕事仕事っ!